診療科・センター

泌尿器科

方針

 赤ちゃんからお年寄りまで、女性も男性も、おしっこのことで困ったらまず泌尿器科にどうぞ。

特色・専門

 尿が出にくい、回数が多い、といった日頃の排尿についての悩みから、腎臓に癌が見つかったがどうしたらよいのか、家族が腎移植を希望しているのだがどうしたらよいのかといった相談まで、幅広い泌尿器科の疾患に対応します。

 特に泌尿器科癌の手術、薬物療法の経験は豊富であり、患者さんと一緒に生活の質を重視した治療を第一に考えながら行っていきます。広く泌尿器科疾患一般に対して、院内だけでなく近隣の施設とも協力し、患者さんにとって最善の治療法を提供することを心がけています。

診療内容

 泌尿器科は腎臓や膀胱などの尿路臓器と前立腺、精巣などの男性生殖器を取り扱う外科の一分野です。この30年の間に泌尿器科の治療は大きく変貌し、前立腺肥大症の治療は切る手術から内視鏡手術、さらには内服薬による治療が中心となりました。体外衝撃波結石破砕機の開発で尿路の結石を開腹して摘出することはほとんどなくなりました。多くの泌尿器科疾患で身体への負担の少ない治療法が普及しつつあります。

 しかし、腎癌、膀胱癌、前立腺癌などの泌尿器科癌で治癒を目指すなら治療の第一選択はやはり確実な手術です。腹腔鏡手術、腹腔鏡下小切開手術、ロボット補助下手術など手技の改良に伴い、腎機能、排尿機能、性機能などを温存する身体に優しい手術(低侵襲手術)が普及しつつあります。当科では癌に対しては腹腔鏡下小切開手術を中心に患者さんの病状に合った確実で負担の軽い手術を心がけています(腹腔鏡下小切開泌尿器科手術認定施設)。

 なお、岡山労災病院ホームページにおもな泌尿器科疾患(膀胱癌、腎細胞癌、前立腺癌、尿路結石症、膀胱炎、前立腺肥大症など)について解説を掲載しています。ご診療の参考になれば幸いです。

ダビンチ手術

【ダヴィンチ手術の導入について】
当院の泌尿器科では、2025年5月に、手術支援ロボット「ダビンチXi」による前立腺癌に対する手術を開始しました。
当院では、これまで腹腔鏡下小切開法による前立腺全摘除術を行ってきましたが、ダビンチ手術の開始により、より精度が高く、身体への負担が少ない手術が可能になりました。
今後は、前立腺全摘除術のほぼ全例をダビンチで行っていきます。
 
【ダビンチの紹介】
ダビンチは米国インテュイティブサージカル社が開発した手術用ロボットで、ダビンチXiは第Ⅳ世代にあたる装置です。現在、日本では800台を超えるダビンチが稼働しており(2025年4月現在)、前立腺全摘除術だけで年間20,000件以上がロボット支援手術で行われています(2024年度)。
患者さんの身体的な負担が少ない腹腔鏡下手術の特長を活かしながら、ロボットによる支援により、従来では不可能とされていた複雑な手術操作が可能になりました。
ダビンチは3つの機器から構成されており、医師はロボットのアームについている鉗子や高画質なカメラを操作して手術を行います。但し、ダビンチのみで手術が行われるわけではなく、患者さんの脇には助手の医師や看護師が寄り添い、補助を行い、臨床工学技士などとも協力して手術が行われます。
 
【ペイシェントカート】
患者さんに接続する装置です。4本のアームを有し、1本には高画質のカメラを接続します。残る3本のアームには、医師(術者)が操作するロボット専用の鉗子を接続します。ダビンチXiでは、従来の機種よりもアーム相互の干渉が少なく、アームの可動領域が広くなったため、手術時の操作性や安全性が向上しています。
   
【ビジョンカート】
ダビンチの中枢となる機器です。ペイシェントカートから送られる画像からハイビジョン3D画像を映し出します。最大14倍までのズームが可能です。
ダビンチXiではドイツのエルベ社製の高性能電気メスを搭載しており、出血量減少に役立っています。
  
【サージョンコンソール】
医師(術者)が操作する装置です。術者は、ハイビジョン3D画像を見ながらカメラを操作し、手術部位を適切な倍率で映し出すことができます。カメラを除くロボット専用の3本の鉗子も術者が操作します。自在に動く専用の鉗子は360°以上回転し、手振れも補正されますので、極めて繊細な操作が可能です。開腹手術は勿論、腹腔鏡手術でも不可能であった複雑で繊細な手術操作が可能になっています。
  
【ダヴィンチによるロボット支援手術のメリット・デメリット】

 【メリット】
○傷口が小さい
内視鏡や鉗子を挿入するため、5-12mmの傷口で済みます(術式によって異なります)。
手術によっては、摘出臓器を取り出すために傷口を延長する場合があります。
 ○術中の出血が少ない
ロボットによる精緻な操作により、開腹手術や腹腔鏡下小切開術と比較して術中出血が少なくて済みます。
前立腺全摘除術は、比較的出血の多い手術でしたが、ロボット支援手術の導入により術中に輸血が行われる例はほとんどありません。
 ○機能の温存が向上
鉗子の正確で細密な動きによって、身体の機能を温存させる効果が期待できます。
前立腺全摘除術では、開腹手術に比べて尿失禁や勃起機能の回復が早くなることが報告されています。
 ○術後の疼痛が少なく、回復が早い
傷口が小さいため、傷の痛みが少なく、術後の回復も早い傾向があります。
 ○術後合併症のリスクが低い
創部の感染が少なく、腸閉塞などの合併症発生率も低い傾向があります。
 ○正確な患部の切除
拡大視野で精密な切除が可能であるため、より正確な癌切除が可能と考えられます。
 
【デメリット】
○触覚がない
鉗子類には触覚がないため、医師(術者)には慣れが必要ですので、ダビンチの製造元であるインテュイティブ社の定めるトレーニングを修了し、認定資格を取得した医師のみが執刀します。
 ○併存疾患によっては手術ができません
前立腺全摘除術では23°頭を下げた姿勢で手術を行うため、脳動脈瘤や緑内障の患者さんの一部はロボット支援手術を受けることができません。
また、以前に腹部手術を受けたことのある患者さんもロボット手術を受けることができない場合があります。
詳細は担当医師にご相談ください。
  
【当院でのダビンチ手術について】
現在、当院の泌尿器科では、前立腺癌、外科では結腸癌に対して保険診療としてダビンチによるロボット手術を実施しています。
当院では各疾患に対して順次対応していく予定ですが、詳細につきましては、各診療科にお問い合わせください。
入院・手術に関わる費用は、年齢や年収、加入する健康保険によって異なりますので、詳細については、お問い合わせください。