診療科・センター

ヘルニアセンター

ヘルニアセンターについて

  • 多くの方々にヘルニアという疾患について、病態・治療の必要性などを広く認識・ご理解していただけるよう啓蒙活動を行っていく。
  • 腹腔鏡手術など最近の手術・治療方法を導入し、低侵襲な治療を患者様に提供する。
  • 日帰り手術を含めた短期入院治療を実践し、患者様がより早く社会復帰をできるようにサポートしていく。

当センターの特色

 ヘルニアとは「脱腸(だっちょう)」「でべそ」と呼ばれ、古くから慣れ親しまれてきた疾患です。推定年間患者数は30万~40万人程度とされ、肥満化・高齢化に伴い患者数は増加しています。年間16万人(約半数)の方が手術治療を受けているとされておりますが、これは残り半数の方は医療機関を受診されていないということも表しています。多くの方が医療機関を受診されていない理由として、「疾患に対する恥ずかしさ」や「どこに相談すればいいか分からない」といったことがあります.ヘルニアは自然に治癒することはありません。そのままにしておくと、大きくなり続け、痛みや違和感だけでなく、歩行障害・排尿障害の原因となることもあります。場合によっては命に関わるような状態となることもあります。

 当センターは、多くの方々にヘルニアという疾患について病態・治療の必要性などを広く認識・ご理解していただけるよう啓蒙活動を行っていくこと、腹腔鏡手術など最近の手術・治療方法を導入し、低侵襲な治療を患者様に提供すること、日帰り手術を含めた短期入院治療を実践し、患者様がより早く社会復帰をできるようにサポートしていくことを目的としております。

 当院は総合病院であり、様々な専門科と連携することで高齢者・心疾患・腎疾患・呼吸器疾患などをお持ちの方に対しても安全に手術治療を行えるよう努力しています。また、24時間救急診療を行っており、短期入院を希望される方にとっても安心して治療を受けていただくことが可能です。

ヘルニア(脱腸)とは

 ヘルニアとは体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。お腹のヘルニア(脱腸)は体内で内臓を保護する「筋膜」がゆるみ、その穴から腹膜や腸などが異動してしまう状態を指します。
「ヘルニア(脱腸)は子供の病気」というイメージをもたれがちですが、むしろ体の組織が衰えてくる中高年層に多い病気です。

 最初は痛みがなく、入浴中やくしゃみをした時など腹部に力がかかった際に、膨らむ部分を発見して気づくケースも多いようです。子供の先天的なヘルニア(脱腸)は成長にともなって自然に治癒する場合もありますが、大人のヘルニアの場合、筋膜は投薬、運動では強化できないため、手術でしか治療できません。

 もしヘルニア(脱腸)でお悩みの方がいらっしゃいましたら、あまり悩まずに外科を受診することをお勧めします。

ヘルニア(脱腸)の種類

ヘルニア(脱腸)はできる場所によって呼び方が変わります。
ヘルニア(脱腸)のタイプには以下のものがあります。
 

そけいヘルニア

 「鼠径(そけい)」部とは、太もも、もしくは、足のつけねの部分のことをいいます。この部分の「筋膜」がゆるみ、その穴から腹膜や腸などが異動してしまう状態です。
脚の付け根に押すと戻る膨らみを見つけたり、引っ張られるような違和感を感じた場合にはそけいヘルニアが疑われます。

 

そけいヘルニアの位置

そけいヘルニアの位置

そけいヘルニアイメージ

そけいヘルニアイメージ

どんな人がなりやすいの?

 一般的に子供の病気と思われがちですが、そけいヘルニアは筋膜が弱った状況で発生するため、むしろ日常的に重いものを運んだり、立ち仕事などの同じ姿勢を続けてきた人、肥満気味な人、加齢によって体の組織が衰えた中高年層などに多く、年間の患者数が約30万人と言われています。

どんな人がなりやすいの?イメージ図

検査と診断

 問診・視触診に加え、CT及び超音波による画像検査を行い「どこから・何が・どれぐらい出ているのか、他のところにはないか」を判断し、適切な手術方法について情報の提供を行います。

そけいヘルニアの危険性

 そけいヘルニアは、自然に治癒することはありません.そのままにした場合、大きくなり続け、歩行・運動の障害や排尿障害の原因となることもあります。
 また、これまでであれば横になったり、軽く押したりすると元の位置に戻っていた腸が、飛び出した隙間にはまったまま、戻れなくなる場合があります。これは、嵌頓(かんとん)と呼ばれ、戻れなくなった腸はどんどんむくみ、締め付けられ、血のめぐりが悪くなることで傷んでいきます。腸の壊死を来たし、重症の場合は緊急手術・腸切除・命にかかわる場合もあります。

 診断された場合は、早期の手術治療をお勧めします。

手術方法

 当院では、腹腔鏡下手術の前方アプローチ法両方を行っています。

  • 腹腔鏡下手術:お腹に数ミリ大の穴をあけ、カメラを用いてヘルニアの穴を修復します。主に軽量型のポリプロピレン製メッシュで内側から筋膜を覆い、腸などが 出てくるのを防ぎます。全身麻酔での手術となりますが、傷が小さいため痛みも軽減でき、当院ではこの手術を中心に行っています。
  • 前方アプローチ法:下腹部に5cm程度の皮膚切開で行います.多くは軽量型のポリプロピレン製メッシュで内側から筋膜を覆い、腸などが 出てくるのを防ぎます。従来から行われている手術方法で,患者様の状態によっては局所麻酔での手術も行っています。
 
腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術

前方アプローチ法

前方アプローチ法

 日帰り手術での対応もおこなっています。

大腿(だいたい)ヘルニア

 そけいヘルニアと同じように、加齢などにより筋肉や筋膜が弱くなることや、重たい物を持つなど腹圧がかかりやすい状態が続いたときに起こりやすいと言われています。そけいヘルニアが中年以降の男性に多くみられるのに対して、大腿(だいたい)ヘルニアは中年以降の女性に多くみられます。特に、出産を多く経験した痩せ型の女性に多いと言われています。

大腿(だいたい)ヘルニア

検査と診断

 問診・視触診に加え、CT及び超音波による画像検査を行い、適切な手術方法について情報の提供を行います。

大腿(だいたい)ヘルニアの危険性

 大腿(だいたい)ヘルニアも自然に治癒することはありません。
 そけいヘルニアと同様に腸の嵌頓(かんとん)が起こる危険性があるため、診断された場合は、早期の手術治療をお勧めします。

手術方法

 そけいヘルニア同様に、当院では、腹腔鏡下手術と前方アプローチ法の両方を行っています。

 日帰り手術での対応もおこなっています。

臍(へそ)ヘルニア

 臍(へそ)ヘルニアは、へそ(臍部)から腸が脱出した状態です。子供の「でべそ」として広く知られておりますが、成人でも、肥満、妊娠、腹部の過剰な水分(腹水)のために臍ヘルニアが生じることがあります。臍(へそ)周囲のふくらみとして認めることが多く、時に痛みがあることもあります。
 そけいヘルニア・大腿(だいたい)ヘルニアと同様に腸の嵌頓(かんとん)を起こす危険性があります。

検査と診断

 問診・視触診に加え、CT及び超音波による画像検査を行い、適切な手術方法について情報の提供を行います。

手術方法

 当院では、腹腔鏡下手術と従来の開腹手術の両方を行っています。

腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニア

 腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアとは、以前に受けた腹部手術の傷跡が弱くなり、そこから腹腔内の臓器が腹筋より外の皮下に脱出している状態です。

検査と診断

 問診・視触診に加え、CT及び超音波による画像検査を行い、適切な手術方法について情報の提供を行います。

手術方法

 人工シートを使って弱くなった腹壁の補強を行います。当院では、腹腔鏡下手術を中心に行っています。